決断の御令嬢

4/8
前へ
/20ページ
次へ
意識はまた現在に戻り、再びムササビの顔を確認する。 瞳は両目とも、空の様な青色だった。 「違う……違う!!あんたはヴェルシュなんかじゃ……!!」 「残念ですが、本物は既に死んでいます。リーリエ様の両親を襲ったのもヴェルシュを殺したのも、全ては貴方を手に入れる為ですよ」 「その顔で!!ヴェルシュの顔で!!戯言を言うなああああ!!」 怒りのあまり、小さいその体でムササビに立ち向かおうとする。 勢いよく走ってくるその姿に再びナイフを振り上げるが、それはアトリの剣で阻止された。 「貴様は部外者だろ!!」 「部外者だろうが関係ねぇ!!女の子に酷い事をした、お前の事が許せねぇんだよ!!」 ナイフを受け止めるだけでなく、上手く刃を滑らせムササビの手首を切る。 痛みに顔を歪ませ、握力が無くなったその手はナイフを簡単に手放した。 落ちたナイフが地面に着いた瞬間、勢いよく体当たりを仕掛けたリーリエに吹っ飛ばされる。 だが怒りはまだ治まるはずが無かった。 主の無くしたナイフを拾い上げ、ムササビに馬乗りに(またが)る。 抵抗すればリーリエの拘束から抜ける事も出来たが、その素振りは一切見せない。 まるでこの結末を受け入れてる様だった。 「リーリエ様も、強くなられましたね」 「……うるさい。お前はヴェルシュじゃないんだ。軽々しく名前を呼ぶな」 「珈琲がお嫌いな事も知ってますよ」 ナイフの刃はムササビの首に突きつけたまま、動きを止めた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加