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意識はまた現在に戻り、再びムササビの顔を確認する。
瞳は両目とも、空の様な青色だった。
「違う……違う!!あんたはヴェルシュなんかじゃ……!!」
「残念ですが、本物は既に死んでいます。リーリエ様の両親を襲ったのもヴェルシュを殺したのも、全ては貴方を手に入れる為ですよ」
「その顔で!!ヴェルシュの顔で!!戯言を言うなああああ!!」
怒りのあまり、小さいその体でムササビに立ち向かおうとする。
勢いよく走ってくるその姿に再びナイフを振り上げるが、それはアトリの剣で阻止された。
「貴様は部外者だろ!!」
「部外者だろうが関係ねぇ!!女の子に酷い事をした、お前の事が許せねぇんだよ!!」
ナイフを受け止めるだけでなく、上手く刃を滑らせムササビの手首を切る。
痛みに顔を歪ませ、握力が無くなったその手はナイフを簡単に手放した。
落ちたナイフが地面に着いた瞬間、勢いよく体当たりを仕掛けたリーリエに吹っ飛ばされる。
だが怒りはまだ治まるはずが無かった。
主の無くしたナイフを拾い上げ、ムササビに馬乗りに跨る。
抵抗すればリーリエの拘束から抜ける事も出来たが、その素振りは一切見せない。
まるでこの結末を受け入れてる様だった。
「リーリエ様も、強くなられましたね」
「……うるさい。お前はヴェルシュじゃないんだ。軽々しく名前を呼ぶな」
「珈琲がお嫌いな事も知ってますよ」
ナイフの刃はムササビの首に突きつけたまま、動きを止めた。
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