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「最初はリーリエ様を、私だけのものにしたかった。綺麗な金髪も人形のような大きな赤い瞳も、全てが大好きだった。だからヴェルシュの暗殺を謀ったのです」
「入れ替わって……アタシと共に住む為にか」
「おっしゃる通りでございます。そしてこの平穏を崩さないために、外部の訪れる人間を殺してきました」
「アタシに嘘までついて、そんなくだらない平穏の為に……アタシは悪の道に堕ちたというのか……」
ナイフを持つ手が震え始める。
声も次第に震え始め、ムササビの顔に一粒の水滴が落ちてきた。
「泣いてるのか?リーリエ……」
どれだけ悪評が広められようとも、どれだけ血に染まろうとも、全ては亡くした両親の為だと思って耐えてきた。
だが求めてた結末は、残酷な現実となって突き刺さる。
悪魔になりきらなくても、答えは隣にあったのだ。
その真実を受け止めきれず、大粒の涙となって零れ落ちる。
「アンタがいなきゃアタシは悪魔にならなくても良かった!!大嫌いな珈琲で、罪を誤魔化す事なんてしなくても良かった!!普通の女の子として生きたかった!!」
感情が爆発し、握っていた手も次第に力が込められていく。
だがムササビは、抵抗もしなければ逃げる事もしない。
浮かべた笑みも、いつもの調子に戻っていた。
「申し訳ございません、リーリエ様。全ては私の責任でございます」
その言葉に答える事無く、リーリエはナイフを振り上げた。
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