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首をはねた直後の死体の傍で、椅子に腰かけくつろぐリーリエ。
そこに、温かい珈琲を運んできた男が現れる。
「リーリエ様、お望みの珈琲です」
「いつもありがとう、ヴェルシュ」
ヴェルシュと呼ばれた白髪の青年は、返り血の浴びた服を着替える事なくリーリエに珈琲を運んだ。
だがそれは彼女にとってはいつもの事で、一切咎めるような言葉は言わない。
ありがたい言葉にヴェルシュは一礼を済ませ、その足で傍に倒れる死体に近付く。
さっきまで珈琲を運んでいた黒い手袋を着けた手を、今度は死体に潜らせる。
ポケット、服の中、隅から隅まで手を這わせた。
リーリエはその様子を、いつもの様に観察している。
「どう?ヴェルシュ」
「……申し訳ありません、この人物もシロのようです」
「そうですか」
何事も無かったかの様に、温かい珈琲を口へと運ぶ。
本来の苦みが口に広がる感覚を味わいつつ、カップを机に戻した。
「リーリエ様」
珈琲を一口飲んだのを見計らって、ヴェルシュが声をかける。
処理しやすいよう死体をまとめ終わり、後片づけを他の執事がやっている姿が目に入った。
「2年前、両親をムササビに殺されてからまるで犯人探しの様に屋敷に近付く者の首をはねてきましたよね」
「……今更辞めたいと申すのか?」
「いえ、ただこの屋敷近辺ではリーリエ様の悪評が噂されているようでして。私はそれが許せなくて」
「あんなもの言わせておけばいい。アタシが何と言われようが、必ずお父様とお母様を殺した犯人の首をはねる」
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