悪魔の御令嬢

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再びカップを手に取り、口の中に珈琲を流し込む。 そのまま一気に飲み干すと、持っていたカップをヴェルシュに突き出す。 もはや幼き少女がする目つきでは無く、まるで復讐に憑りつかれた悪魔のような目をしていた。 少し気圧されながらも、ヴェルシュは膝を着き突き出されたカップを受け取る。 「リーリエ様が歩まれる道、どこまでもお供します」 「よく言った。助かる、ヴェルシュ」 カップをそのまま渡すと、立ち上がり屋敷とは反対の方を向く。 「散歩をしてくる。夕刻までには戻るわ」 そのまま屋敷の周りにある森の中へと足を踏み入れる。 森に囲まれた屋敷なのだが、1度森に入ってしまえば屋敷までの帰り道が分からなくなる程同じような光景が続いていた。 だが何度も森で遊んでるリーリエにとって、ここは庭も同然。 迷いなく屋敷まで帰る事が出来れば、村へ辿り着く事だって出来る。 だが彼女の目的地は、村ではない。 目的は、森にある2つの石碑だった。 並んだように佇むその石碑には、2人の名前が刻まれている。 「お父様、お母様……」 そう小さく呟くと、さっきまでヴェルシュに見せていた目とは全く違う年相応の目から涙が零れていた。 父と母が死んだ日から、他人には見せないと決めていた涙。 だが大切な者の死は、幼き少女には酷な出来事だった。 誰にも見られない所で、父と母が死んだこの場所でだけ、リーリエは素直になれるのだ。
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