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一期一会 その4
男性店員が勧めてきたのは、季節のパフェだった。
「パフェ、ですか...」
この時間からだと、背徳感がある。でも明日は休み。疲れているし、甘いものもタベタイ。
和葉は頭のなかで、いろいろなものに理由をつけてパフェを頼むか悩んでいた。そこに男性店員が和葉に声をかけた。
「うちのはそんなに大きくないんで、お客様が気にされているようなことへの影響は少ないかと思いますよ」
見透かされたかのような話だったが、言葉の端々から自信は伺えた。そういうときはその言葉に身を委ねるに限る。
「では、季節のパフェ、お願いします」
「承知しました」
カウンターの下から、マンゴーとクリーム、チョコクランチ、オレンジ色のソースを取り出した。パフェの器は男性店員が言うように大きくなく、女性の手のひら分の高さだった。
ガラスの器にオレンジ色のソース、クリーム、砕いたチョコクランチ、クリームをきれいに手際よく重ねていく。 マンゴーは少し大きめにカットされ、盛られる。最後に薄く切られたマンゴーを花のように盛り付けると完成した。
オレンジと白のコントラストもきれいだが、一層だけあるチョコクランチがアクセントになっていて、目にも楽しい。
「季節のパフェ、マンゴーパフェです」
すっと出されたパフェは見ているだけでもため息が出るくらいきれいだ。
「一番下のソースはマンゴーです。お楽しみください」
(美味しそう...!)
和葉はさっとスプーンを取り、チョコクランチまでを一口取り出す。口に入れるとチョコクランチのザクザク感とマンゴーの柔らかさを楽しめる。クリームも重くなく、マンゴーの美味しさを引き立てている。
「映え、は良かったんですか?」
黙々と食べている和葉に男性店員は声をかけた。
「あ、あーいうのは、ちょっと。出来たそばから食べたい派なんで」
SNS映え、というのに疎い和葉。言い淀んでいる和葉に男性店員は笑顔を向けた。
「そうでしたか。引き続き、お楽しみください」
不意打ちの笑顔に和葉はドキッとしながらも、目の前の美味しいパフェを味わった。
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