the embroidered sky

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「おほしさまになるって言うだろ」 「え?」 「ひとがしんだらさ」 課題を仕上げるのにいまいち情報が足りないねと、2人でノートパソコンの画面を覗き込んでいた。キーをたたくのは僕なのだからもう少し場所を空けてくれてもいいんじゃないのと言おうかどうしようか、言ったところでこいつが素直な反応を寄越すことはないだろうからまあいいや、という思考が頭の中を一周した矢先の一言だった。 それこそ他所(よそ)のオホシサマからやってきた、何か未知なるものに身体を乗っ取られでもしたのかと本気で思った。 検索サイトのトップニュース欄に踊る文字。『しし座流星群、ピーク近づく』。 「なんでこんなのニュースにするんだろ」 「ああ……まあ、流れ星なんてそう見られるもんじゃないし……?」 「……」 一応受け答えしてみたものの、的を射ている感じが全然しない。けれど、こいつが僕の返答に全く期待していないことは明白に伝わってくるので、別によかった。陰りを帯びた黒い瞳は画面に向けられているが、意識は明後日の方向にある気がする。 何か思うところがあって、こいつがこんな暗い顔をしているのだろうということは分かる。けれど、その「何か」がなんなのか、そこに僕が踏み込んでいいのかどうかについては、答えが出ない。こんな風に迷っている時点で、触らない方がいいんだろうなとは思う。 こいつが転校してきた小学生時代から、なんだかんだで10年以上の付き合いになる。そしてこいつは、知り合ってそう経たないうちに僕の親友の座にしっかりと陣取った。当然、今も。けれど、僕が知らない一面はまだまだあるらしい。 流れ星の話題、タブーなのか。
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