それでもまた夏は来る

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夏休み明け、初日。 半日だけの学校が終わり、家に帰るとすぐに、友人で同じ天文学部の祐子が、泣きながら、「今すぐ家に来て!」と電話してきた。 「どうしたの?」と聞いたけれど、「いいから!はやく!」と一方的に切られてしまった。 それで私はしかたなく、制服を脱ぎかけていた手を止めて、ケータイを握りしめると急いで家を出た。 何が何だか分からないけれど、とにかく非常事態らしい。 祐子の家まで走って3分。 息を切らしてインターフォンを押すと、相変わらずしゃくり上げている祐子が出て、「空いてる。もうみんな来てるから」と言った。 みんな、というのは私を含めた天文学部のメンバーのことだ。祐子、千春、彩花の4人。クラスはみんなバラバラで、天文学部に入ったことがきっかけで仲良くなれた。 天文学部、というと真面目な集まりのような聞こえがするが、実際は名ばかりの部活で、放課後に集まって先生に隠れてお菓子を食べながら、天体とは関係のないことをしゃべっているのがほとんどだった。 しかし今日の集まりはなかったはずだし、このメンバーで集まる理由がどこにあるのか、ましてやどうして祐子が泣いているのか、私には皆目見当がつかなかった。
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