それでもまた夏は来る

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まず、話したことはなかったけれど、私は小さい頃から心臓が弱くて、入院生活を送っていました。 味の薄い食事をし、運動は制限され、元気に同い年の子が公園で走り回っているのを、清潔なベッドの上から窓を通して世界を見下ろしていました。 その様子を目にするたび胸が苦しくなって、どうして自分は普通に生活できないんだろう、どうして自分だけこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう、と不平等な世界を憎みました。 ところが人生とは分からないもので、私のこれまでの入院生活の帳尻をみんながとってくれました。 あんなに話しかけるなオーラ全開で、あからさまに心を閉ざしていた私のことを、よくもまぁ、あんなに根気強く話しかけてくれたと思います。 おかげで私は、みんなと出会って一緒に時間を過ごすためにあの入院生活があったなら、まあ、神様のことも許してやるかな、なんて思えました。本当に夢みたいな時間だった。みんなが私の人生をひっくり返してくれたの。ありがとう。みんなにとっては、お菓子を持ち寄って交換するとか、帰り道に肉まんを買って半分こするこか、お揃いのキーホルダーをつけるとか、そんなの、些細でありふれたことすぎて、とるにたらないことだったかもしれないけど、私にはそれがどれだけ嬉しかったか…。私にとっては全部が初めてで、その一つ一つ、いちいちに、毎回感動していました。もし、いつも無愛想に見えていたのだとしたら、それは嬉しくてにやけそうなのを必死で抑えていたからです、ごめんなさい。
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