それでもまた夏は来る

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空いている、といわれたとおり、玄関のドアは開けられていた。 私は小声で「おじゃまします」と言って中に入り、靴を脱いだ。祐子の部屋は2階に上がって左奧にある。扉の前で立ち止まってノックをした。 「…祐子?私だけど、入っていい?」 言うなり向こうから扉が開けられた。 「菜摘!待ってたんだよ、入って入って」 顔にハンカチを当てた祐子が言い、言われるまま部屋に入れば、机の前でなぜか正座している彩花がいた。 彩花と目があったけれど、彩花も何が起きているのか分からないらしく、きょとんと首を傾げていた。 促されて彩花の隣に座る。なんとなく、彩花と同様に正座で座ってしまった。私達の前に祐子が座る。 「それ、みてほしいの」 「それ?」 祐子が目をやった先にあったのは、机の上に置かれた封筒だった。何の変哲もないただの白い封筒。 中身を隠すためだけに使われているような、装飾もついていない地味な封筒だった。見るかぎりもう封は明けられている。 「この手紙がどうしたの?」と彩花が聞く。 「待って、本格的な話しをしようとしてるなら、私も気になるけど、まだ千春が来てないよ」私は彩花の言葉を制した。 どうせ話しを聞くならみんなそろってからがいいだろう。 「あぁ!そうだったね、ごめん、先ばしっちゃった」と彩花が謝る。 しかし祐子は眉を歪ませて、「手紙、裏返してみて」と言った。 私と彩花は顔を見合わせて頷き、彩花が手紙を裏返した。
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