それでもまた夏は来る

3/16
前へ
/16ページ
次へ
〝千春〟 そこには小さな細い字で、千春、と書かれていた。 差出人を示した名前に私と彩花はすっかり肩をなでおろした。 「なんだ、千春から?」 何か大事が起ったかと思ったのに、千春からの手紙なら、一体何を泣くことがあるだろう?きっと大した内容じゃない。 「千春も手紙なんて書くんだね?」 「ほんと、明日雨でも降るんじゃない?」 「嵐だな」 「嵐だね」 私と彩花が軽口を叩いて笑っていると、「そんなこと言ってる場合じゃない!」と突然祐子が声を荒げた。 「千春はねぇ!もうここにいないんだよ!」 拳を握りしめて、いないんだよ、とつぶやいた。 「いなくなっちゃったの、千春」 祐子はまた泣き始めた。 「……どういうこと?」 おそるおそる私が聞くと、乱れた呼吸のあいまに祐子が話した。 「家に、帰ってきたら、…手紙が届いてて、読んで、……『嘘』、って思って、……た、確かめなきゃで、…千春と同じクラスの子に聞いて、…そしたら、ほんとに、千春、…学校来てなくて、……さっき、千春の家行ったら、やっぱり、誰も居なくて…」 肩で息をする祐子をなだめて落ち着かせ、私と彩花は机の上にある手紙に目線を移した。 そしてすでに封の切られたそれを、手に取って読み上げだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加