それでもまた夏は来る

7/16
前へ
/16ページ
次へ
久しぶりに走ったせいで脇腹が痛い。 ○○丘に着くと二人はもう着いていた。 「ごめん、遅くなった」 「ううん、うちらも今来たとこ」 「じゃあ、行こうか」 二人とも頷いて、私達は真っ暗な林の中へ足を踏み入れた。 昼間の明るく開放的な雰囲気とは違って、夜の○○丘にある散歩コースは不気味だった。 「ねぇ、千春、ほんとにこんな暗い道歩いたのかな?」彩花が聞く。 「うん、たぶん」私は答える。 「ひとりで?」 「…たぶんね」 「あいつ勇者だな」 恐がりな彩花は私の腕と祐子の腕をつかみ、しがみついて歩いていた。いまにも帰りたいと言いだしそうだ。 「…菜摘はなんで○○丘に千春がいると思ったの?」 スマホのライトで足元を照らしながら祐子が尋ねる。 「あぁ、それは…、昨日、部活で見たんだよね、偶然、千春の鞄の中に天体観測の本が入ってるの」 「天体観測?」 「ほら、うちら一応天文学部じゃん?」 「うん」 「それで今日はペルセウス流星群じゃん?」 「……」 「……」 二人は黙り込んでしまった。 「彩花何のことか分かる?」 「ううん。祐子ちゃんは?」 「わかんない」 二人が説明を求めるように顔を向ける。 「夏に見られる流れ星だよ。一年に一度ある。すごくたくさんの星が流れるの。…って私も朝のニュースで見て知ったんだけど…。」 「そうんなだ」 「ほうほう」 「……でも、それと千春が、何の関係があるの?」 「え?、いや、だから、千春見たいんじゃない?流星群」 「え、千春が?」 「うん」 「おー」 「千春ってそんなロマンチストだっけ」 「でも本持ってたし」 「…!、……っお化け出たらどうやって戦えばいいのかな?」 急に彩花が的外れな言葉を口にした。 「彩花…」 「何なにいってんの」 「だって!ほら、あそこ!おばけいる!」 「はぁ?」 「マジだ!!」祐子の声に顔を向ければ本当に人影があった。 突然のことに驚き、私達は岩陰に隠れてしまった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加