社畜OLは生意気な後輩に救われる

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「…………じゃあ、泊めてもらおう、かな?」  詩帆はためらいながら、イエスと答えた。  いや、答えざるをえなかった。    元々、会社に泊まって仕事を終わらせるか、一度帰ってまた明日来るかの二択だった。  だからこれは、せっかく近場の家を提供してくれるなら泊めさせてもらって、明日会社に来た方が効率が良いと思っての判断だ。 「あれ、もう少し押すつもりだったんですけど」  意外とあっさりイエスがもらえて、柴浦は拍子抜けのようだ。  そんな柴浦に、詩帆は言う。 「だって。残ったところで君のこと考えて仕事にならない気がす……」  しかし、途中でハタと気づいて言葉を止めた。   (今、私、何を口走った……!?!?)  止めたものの、ほぼ言い終わっていたので時すでに遅し。  詩帆が恐る恐る柴浦の顔を見ると、その顔はかなり嬉しそうだった。 「そっか。先輩、俺のことで頭いっぱいになっちゃうんだ」  にやり、と笑いながら柴浦が詩帆ににじり寄る。  詩帆は反射的に後ずさる。 「言葉のあやよ。忘れて」 「嫌だね。忘れない」  生意気な後輩が目の前に現れる。  後ずさりたいのに、手が握られたままなので腕の長さ以上には離れられない。柴浦ににじり寄られると、詩帆は背中を反って少しでも離れることしかできなくなった。  そうすると、自然と柴浦を見上げる形になった。そこで詩帆の目に入ったのは、彼の背後にキラキラと輝く、星が散りばめられた夜空だった。  濃紺の夜空には、真っ白な月と星がよく映える。  屋上に来た時にも見上げたけれど、そのときはそんな風に思わなかったのに。  今、柴浦越しに見る空がこんなに眩しく感じるのは、どうしてだろう。   (……私の心が、荒んでいたから?)  仕事で疲れていたのはまぎれもない事実。  目の前の仕事ばかり見て、私生活もままならなかった。  目に入るものすべてが、暗く濁っていた。 (これじゃほんと、浮気されても何も言えないな……)   「先輩? どうしたんすか?」  突然黙り込んでしまった詩帆を心配し、柴浦が声をかける。
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