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警察上層部は福野さんの事件を花の狩人事件だと認めなかった。
模倣犯の仕業も有り得るとみていたからだ。
しかし田倉裕太くんの殺人事件をきっかけに、渋谷警察署に置かれた過去の花の狩人事件の捜査本部と合流する事を命じた。
これにより福野さんの件も含め、花の狩人事件と認定されたのだ。
それ以後は福野さんの事件を第四の事件。
田倉裕太くんの事件を第五の事件として呼ぶ事にする。
私たちも渋谷警察署に移動を開始した。
渋谷で最初の事件が発生したからだ。
渋谷警察署に入り、大会議室に赴くと既に50人を超える捜査員が集まっていた。
捜査員のざわめきがひしめく中、影原捜査一課長が入ってくると一瞬にして静寂に見舞われた。
「捜査会議を始める前に紹介しておきたい人物がいる」
捜査一課長が遠くを見つめながら合図を送っていた。
遠くの席を振り返ってみると、初老の男性が立ち上がった。
歳は鉄さんと少し下だが、その風格はくたびれたコートに猫背。
どこかやる気のなさそうな男性に見えた。
「彼は最初の花の狩人事件から捜査に当たっており、捜査本部が縮小されても花の狩人を追い続けた槇沢吾郎警部補だ。過去の事件で分からないことがあったら、槇沢さんに聞いてくれ」
捜査一課長が槇沢さんを紹介すると、槇沢さんは無言で会釈をした後、ゆっくりと腰を下ろした。
「よし、では始めるとしよう」
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