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「俺は君よりも長くアイツと一緒にいた。アイツのお陰で何度も煮え湯を飲まされた。俺の苦労に比べれば君の悩みなんか可愛いもんだ。しかしそれでも俺はアイツを見捨てなかった。何故だか分かるか?」
池元捜査一課長の問に私は無言で答えた。
「捜査一課に欠かせない人物だからだ。度重なる難事件。知識豊富な凶悪犯。こいつらを手玉に取れる捜査官は他にはいない。そう信じてきたからだ」
池元捜査一課長の言葉は説得力があった。
しかし、彼は肝心な事を忘れている。
「でももう影原警視正は捜査一課にはいないんですよね?」
影原警視正は捜査一課長を辞めた後、池袋中央警察署の署長となった。
それは池元捜査一課長も重々承知していた。
「ああ、だから俺達が証明してやろうじゃないか。奴がいなくても俺達はやれる。強い捜査一課を作ろうじゃないか」
池元捜査一課長が熱く語る本心に心が揺さぶられた。
捜査一課長も影原警視正に振り回された被害者だ。
見捨てなかったと言ってるが、心の底では見返してやりたいという気持ちに駆られていたに違いない。
私も同じだ。
影原警視正を見返してやりたい。
その想いが池元捜査一課長の言葉で更に強くなった。
気が付けば私は池元捜査一課長に笑顔を振りまいていた。
「分かりました。やりましょう」
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