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これが私の秘策だ。
4年前、私はこの件を当時の人事課長である谷崎監察官にも報告していた。
ところが谷崎監察官はこれ以上、警察組織の不正を明るみにはさせまいとしてこれを黙殺した。
もしこれが明るみに出れば谷崎監察官も黙っていたという事で、何らかの処分がくだされる。
輝かしいキャリアに傷を負うことになるのだ。
昔から可愛がってた部下の手によって……
あとはこの男にそれができるかどうかだ。
柳木人事課長は何も言わなくなった。
しばらくの間、沈黙が続いていたが、フッと鼻で笑い口を開いた。
「……全く、君らは似た者同士だな」
「えっ?」
「『皮剥事件』の際、私は影原警視正にお話した。その際、彼の虚偽の証言が使えると思った矢先、影原警視正は谷崎監察官の事を口にした。嘘の証言をそのまま通したのが当時の谷崎人事課長だからだ。結局、私は諦めたよ。そして今回も諦めるだろう」
そう言うと柳木人事課長は立ち上がった。
「だからと言って、完全に諦めた訳ではない。どこか抜け道を探して、これを武器に戦ってみせるよ」
柳木人事課長は不敵な笑みを浮かべた後、そのまま捜査一課長室を出て行った。
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