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話が終わった後、私は書類作業に勤しみながら先程、人事課長に言われた事を思い出していた。
――似た者同士か………
昔……池元警視正にも言われたっけ……
正直、まだ嬉しいとは思えない。
純粋に喜べれないし、実力ではまだまだあの人の方が上だ。
それでも、私は影原警視正の事を思った。
影原警視正はどんな気持ちで捜査一課長の椅子に座ったのか。
花の狩人を捕まえたいが為と公言していたが本心はどうだったのか……
大好きな捜査と推理さえできればそれでいいという人間だが、本当にそれだけなのだろうか……
それが知りたくて知りたくて気が付けば私は昇任試験を受け、がむしゃらに仕事に勤しんだ。
そして今、捜査一課長の椅子に座っている。
だけどまだ実感が湧かない。
それよりもこの先の不安と重責に押し潰されそうだ。
――影原警視正もこんな気持ちだったのかな………
影原警視正の気持ちを考えれば考える程、無性に会いたくなる。
しかし、それと同時に会いたくないという抵抗が現れる。
今更、会って何を話せというのだ。
嫌な思い出が蘇り、気まずくなるだけだ。
結局、私は会いたいという気持ちを捨て去り、書類作業を再開した。
――コンコン……
「失礼します」
ドアが開き、松島が入って来た。
「捜査一課長。池袋管内において殺人事件が発生しました」
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