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「うーん、やっぱりとどかないー」
満点の星に向かって、少女は毎夜手を伸ばす。
きらきらと輝く夜空の星は、いつだって手が届きそうで届かない。
「せんせいが言ってたの。お父さんとお母さんは、お空のお星さまになったんだって。ねえ、たくさんありすぎてわからない。どれが美空のお父さんとお母さんなの?」
「さあ、どれだろうね。それは僕にも分からないなぁ」
いつまでも家に入ろうとしない小さな少女を迎えに来た少年だが、このままではミイラ取りがミイラになってしまいそうだった。
少女の小さな手はすっかりと冷たくなってしまっている。
少年はその手をそっと包み込むと「はあ」と自分の温かな息を吹き掛けた。
「美空の手、こんなに冷たくなっちゃってるよ。さあ、早く中に入ろう。このままここにいたら風邪をひいちゃうから」
「ええ、もうちょっと! だって、今日こそはお空のお星さまに手がとどきそうなんだもの」
そう言って駄々をこねるまだ五歳の妹に、少年は困った笑顔を浮かべる。
確かに美空の言う通り、夜空に瞬く星々は今にも降り注がんばかりの輝きを放っている。
――怖いな、本当に星が落ちてきそうだ
その圧迫感に、少年は恐怖さえ感じていた。
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