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そんな二人の後ろから、がらりと乱暴に窓の開けられる音がした。
「おいこら海渡! 妹の説得にいつまでかかってんだよ、飯が冷めちまったじゃねえか!」
「ああ、ごめん陸護。美空は手強いな、僕の説得では無理みたいだ」
「はあ? ったく、役に立たねえ兄貴だなぁ」
窓枠を乗り越えて二人の側へとやって来た少年は、もう一人の兄である陸護。
美空の目線に合わせて腰を落とすと、ぽんと彼女の小さな頭に手を乗せた。
「いいか、美空。そんな風に手を伸ばしたって届く訳がないんだ。ここから星まではな、本当はめちゃくちゃ遠いんだぞ? 雲を突き抜けて、大気圏を突破して、更には太陽系をも――」
「ちょっと陸護! そんな小難しく夢も希望も無いことを言うなよ。美空はまだ小さいんだから、もっとこう、まるっとファンタジーに説明できない?」
「小さいから何だってんだ? 無理なものは無理なんだから、本当のことを話してやるのが一番だろ」
そんな兄の陸護とて、本当はまだ十歳の子ども。
リアリストを気取ってはいるが、彼には大人にならざるを得ない事情があった。
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