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そんな不思議な出来事から夜が明けた、次の日。
公園に出たのを気づかれずに部屋へ戻った俺はそっと外を見たが、そこにもう彼女の姿はなかった。
「星も、消えたな……」
道にはしゅわしゅわと心地よい音を立てる星の名残だけがあって、例年ならなんとも思わないそれも今年はなんだか目に留まってしまう。
昨日の事はなんだったのか。
彼女は結局、誰だったのか。
そんなわからないだらけの記憶を撫でながら学校への道を歩いていると、後ろからクラスメイトがおはよう、と声をかけてきた。
「あ、おはよう」
「見たかよ昨日の、ここ数年で一番すごかったらしいぞ」
すごいというのは、星の事だろう。
そうなんだと話を合わせると、そいつはつまらなさそうに目を伏せた。
「一番でも、彼女には会えなかったなぁ……」
「彼女?」
彼女というのがが誰の事か言っていないのに、無意識に俺の心臓が高鳴ったのを感じる。
「知らないのかよ、星降る夜の神様の話」
「星降る、夜の」
心臓が高鳴る中で、そいつは神様の事を教えてくれた。
神様は一年に一度、星が降る世界に舞い降りてとりとめもない話をするらしい。そして別れ際に一つだけお願いが叶うおまじないをくれるらしい。そんな、不思議な都市伝説。
「それって」
記憶の中にある、昨日の事。
もしかして、まさか、昨日の彼女は――
「なぁ、もし神様に会えたらお前はなにをお願いする?」
「あ、なにって、そんな」
「例えばだよ、例え話」
ひどくピンポイントな例え話だけど、答えが出るのにそう時間はかからなかった。
少しだけ首を傾げて、頬を緩めて。
「んん……内緒」
「なんだよ、それ」
「内緒なのは内緒だ」
だって口にしたら、叶わない気がしたから。
このお守りがあっても、難しいってわかっている。それじゃ俺の涙も、来年の星になってしまうから。
「また来年まで、取っておくんだ」
願わくば、また彼女に会えますように――
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