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ツノに願う
「綺麗だな」
「うん」
「そうねぇー」
深夜、こっそり棲家を抜け出して、3人は海岸の岩山を背にして何かから隠れるように座っていた。
今夜は年に一度、星神様が我ら一族の声を聞くために星を降り注いでくれる日だと教えてもらったリコは、どうしても二人と一緒にみたくなったのだ。
それぞれ、親の目を盗んで集まるのは難易度が高く今年ようやく集まれたのだった。
流星群は水面に反射してキラキラと幻想的な景色を映し出して3人を歓迎しているようだ。
降り注ぐ星が少なくなっていたが、まだ大丈夫だろうとリコは思った。
「なぁすごいものを見せてやるよ。ラミア、お願いがあるのだけど周りから見えないように“夜”を作って」
「うん。いいわよぉ」
長い髪を縦に振ってラミアは鋭い爪で空を切ると岩陰周辺を薄暗く囲む。周囲と3人の空間が分裂された今、誰にも気づかれないだろう。
リコは額にある長いツノに集中する。ツノが少し大きくなりほの暗く光りだす。
——星神様、お願いです。僕の声を聞いて下さい。
「リコ?」
三人の中で一番幼いルラは不安そうに燃える瞳を揺らして見守っている。
——神様、どうか、どうか。
しかし、どんなに祈っても何も起こらない。
そうこうしている内に最後の流れ星が消えてしまった。
「消えちゃったね〜。リコはなにをしようとしたの?」
がくりと肩を落とすリコにラミアは質問する。
ルラは彼の肩に手をおいて優しくさする。
「リコはお星様を呼ぼうとしたの?」
「え、なんで知ってるの?」
僕らの種族しかしらないことだ。なぜルラは知っているのか。
親指程の小さな2本角に手を添えて、ルラは「私のとこでも似たようなことするの…」と小さく呟くと、2本の角の間で青白く静電気を起こる。
「こうしてお星様を呼んで、角を強くするんだって。私はまだできないけど」
「へー、ルラもリコもそういう風習があるのね。私のとこはないな〜」
星を見て楽しむってことがあんまりないからな。っとラミアはのんびりという。
「でも今日のは綺麗だったよ〜。誘ってくれてありがとうリコ。一生の思い出ね!」
「一生……」
「だって、こんな風にもう集まれないと思うし。最後と思わなきゃ名残惜しいじゃない〜」
敵同士だし。ラミアの口から放たれた言葉にリコは胸が苦しくなった。
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