せめて、星を贈りたくて

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 夜露が足に冷たかった。  肌をくすぐる柔らかな葉。湿った土。所々に小さな青い花が咲いている。  サンダルを両手に下げ、彼女は丘をかけあがる。そして星空を背に、振り返った。はやくと、笑顔で手をふっている。  丘の上。シートを広げ、二人寝転ぶ。白い指先が、一つ一つ星を教えてくれる。その声が心地よくて、内容はあまり頭に入ってこない。  きらきら輝く瞳を、こっちにも向けてほしくて。じゃあこれは?と手をのばして花を摘まむ。勿忘草だとあっさり答えられてしまった。  まだかな。  もうすぐだよ。あ、ほら。  星が一つ流れる。二つ、三つとすぐに無数の星が流れ落ちる。一面の流星群。こんなにもたくさんの星が流れても、空の輝きが減ることはない。  なんだか掴めそう。  そう言って、彼女が手をのばした。うっとりとした表情。うらやましい。星に嫉妬しても無意味だと、わかってはいるけれど。  彼女が病に倒れたのは、それから数ヵ月後だった。
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