せめて、星を贈りたくて

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 原因不明の流行り病。治療法も見つからぬまま、次々に人が亡くなっていく。同時期に、自然災害も頻発した。彼女の看病に必死で、それどころではなかったけれど。  大雨に洪水。地震、火山の噴火。山火事。世界のあちこちで大惨事がおきつづけたという。様々な憶測も流れたそうだ。  彼女の葬儀は一人きりで行った。その頃にはもう、社会は崩壊の一途を辿っていた。  そうして国から発表されたのは、星の衝突。一年以内に星が衝突し、滅びるとの知らせだった。  もう、どうでもよかった。  数年前から、可能性を把握していたということも。他の星に避難するため、極秘裏に船の建設が進んでいたということも。その船がようやく完成したが、すべての人が乗れるわけではないということも。もう、どうでもよかった。  彼女の存在しない世界に、興味はない。  船に乗れない者の内、一部が暴動を起こした。船は出向し、ただでさえ減っていた人口がさらに減った。多くの人が自暴自棄になった。  元々、星の移動を希望しなかった人たちは、淡々と日常を続けていた。荒廃はしたけれど、細々とした暮らしは続けられた。  刻々と時が過ぎる。衝突の日が、確実に近づいてくる。  そうして、終わりの日を迎える。
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