出会い

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出会い

桜が散りかけた4月。入学式は何日か前に終わってて、周りは早速グループを作り始めていた。僕も中学からの友達彰(あきら)と尊(たける)とクラスが同じだったからずっと同じ行動をしていた。 その日は毎朝迎えに来てくれる彰も尊も部活の朝練で迎えに来れなくて、高校に入学して初めての一人登校だった。僕は飽きっぽい性格のせいかどの部活にも興味を示せなくて、中学も部活に入らず放課後は毎日色んな景色を求めて彷徨ってたから高校も同じく部活には入らないことを決めてた。僕の家から高校までは歩いて20分。彰と尊がいたら二人とも自転車だから僕の鞄を奪って「おい!走れ!」と走ってたかな。だからその日はいつもより少し早く家を出て、ゆっくり歩いて高校に行くことに決めた。いつもと違うならとことん違う景色を見たいと思ってしまったからだった。 行ってきます。と言い玄関を閉めて家の門を左に曲がると長い黒髪の女の子が目の前を歩いていた。(同じ高校かな?) 僕はこの道で初めて友達以外を見かけた為、僕と同じ制服を着ているその女の子をなぜか物凄く気になってしまった。 (声をかけるか、いやそんなことをして気味悪くされたら学校での印象が悪くなるかも…) 自問自答を繰り返しながらその女の子の後ろを歩いていた。すると住宅街を抜けた先で信号待ちをしている女の子の姿があった。声をかけるなら今だと僕は勇気を出して早歩きをした。 「あの!…早川高校ですか?」 信号待ちをしている女の子の隣に間に合った僕が言った一言は、誰がどう見ても早川高校の制服を着ているから分かるだろとツッコまれても仕方がない程苦しい一言だった。 「はい、そうですが…どちら様ですか?」 女の子は僕の方を向いて不思議そうに首をかしげながら聞き返してきた。 (え…かわいい。) 後ろ姿しか見えなかったその女の子は、揃った前髪にはっきりした二重、そしてその髪の色とはあまり合わない薄青い瞳。アクアマリン、いやサンタマリアアクアマリンの様な最上級の宝石の色をした澄んだ瞳だった。想像していたよりその女の子は可愛く、かつ僕の好みだった。 「あ、えっと、登校中にこの道で友達以外の人と会ったことないからどのクラスかなって。」 慌てふためきながら女の子に嫌われないように慎重に言葉を選んで話しかけた僕。いつもなら単語だけを繋げて助詞とか副詞とかそんな言葉は気にしないで話していたけれど、今日の僕は目の前の可愛い女の子に良い格好を見せたく頭をフル回転させていた。 「私は3年E組の白石天(しらいしてん)。よろしくね。」 女の子は先程の不思議そうな顔から笑顔で僕に自己紹介してくれた。 「あ、3年だったんですね!すみません、タメ口を使ってしまいました。僕は1年A組の川島涼(かわしまりょう)です。よろしくお願いします!」 同級生かと思い話しかけた女の子は3年生だった。道理で見たことのない女の子だと思った。先輩と僕はお互いに自己紹介を済ませたあと横断歩道を渡り高校に行くまでの坂道を登り始めた。 「学校着いちゃったね。私はこっちに用あるからまたね!」 「あ、はい。また。」 先輩は笑顔で僕に手を振りながらグラウンドの方へと走っていった。何か部活に所属しているのだろうか、先輩だったらきっと選手じゃなくてマネージャーだろう。そんな妄想をしながら一日が終わった。
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