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「涼、今日から部活あるから一緒に帰れないわ。ごめんな。明日朝は迎えに行くから!」
彰からそうホームルーム終わりに伝えられ、同じことを尊からも聞かされていたため、今日から放課後はまた色んな景色を探しにいけると思っていた。掃除を終わらせ、三階にある教室を出て、階段を降り、玄関で靴を履き替えていた時後ろから「わっ!」とおどろかされた。
「っつ!誰?!」
振り向くとそこには今朝一緒に登校した先輩の姿があった。
「ごめんね、びっくりしたでしょ。」
ニヤニヤしながら僕の顔を見る先輩。その顔はすっかりいたずら少女の顔になっていて、僕にはたまらなく胸がキュンとした。
「どうしたんですか?」
僕は少しでもスマートに対応しようと平然を装って答えた。が、先輩にはそんな小細工は通用せずに驚いたことを見透かされていた。
「じゃあね!」
僕と先輩は玄関先で少し話をしてわかれたあと、先輩はグラウンドに走っていった。何の部活かなと気になって僕はこっそり後を付けたけれどその先に先輩の姿はもうなかった。
(先輩意外と足速いな。不思議な人だ。)
僕は今日一日で先輩とここまで仲良くなれたことに感動しつつ、登校とは別のルートで家へ帰ることにした。
僕の通う早川高校は町の小高い丘の上にあった。高校の近くには丘の上公園という町でも有名な見晴らしの良い場所だ。僕は飽きっぽいけれどそこから見える景色だけは好きで、よく出かけていた。一日合ったことを振り返りながら、この場所で思い出すことがいつもあった。それは一ヶ月前、高校入試が終わった夜の出来事である。その日僕は長い入試勉強を終えて、試験が終わった喜びから家族と夕食を済ませたあとひそかにこの公園に来ていた。
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