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この時、俺は耳にしたことを口に出さなかったけど、友達も聞いていて、同じことを思ったのだろう。一様に表情に不安を見せた。
「もー、なにボンヤリしてんだよっ! ボンヤリしてる暇があるんだったら、次の店に行こーぜ! 目指せ、全店せいは! だろっ」
リーダー格の友達が声をあげ、皆を鼓舞する。暗くなっていた俺たちは、その声に突き上げられ、早速別の屋台に向かうことにした。
「あれ? あの子、どうしたんだろ?」
次の屋台目指して歩き出してすぐ、一人の子供が目に入った。
その子は屋台と屋台の間の薄暗い場所に立ち、キョロキョロと辺りを見回していた。不安そうな面持ちで行き交う大人たちの顔ばかりを見ている様子は、明らかに迷子の仕草。俺たちは「迷子かな?」とか言いながら、その子に近づいて行った。
「ねえ、君。どうしたの? 迷子になっちゃった?」
ここでもリーダー格の友達が先頭に立ち、強くも優しい言い方でその子に尋ねる。不安な時に突然声をかけられ驚いたのか、その子は大きく見開いた目で俺たちを見た。
(うわぁ……。キレイな目だな)
その子はすぐに目を伏せてしまったけど、一瞬見えた目は凄く印象に残った。色は俺たちと同じ黒色なんだけど、白目の部分が見えなくて、動物の目みたいだった。今になって思えば、明らかに自分たちとは異なるのに、この時は特に気にすることもなかった。その子は、髪の色も少し赤みがかっていたから、外国の子だと思ってたんだ。
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