星降る夜

4/9
前へ
/9ページ
次へ
「そっかぁ。なら、そこにテントがあるから探してもらおうよ」  俺が惚けているほんの僅な間に、リーダー格の友達はその子から色々と聞き出し、話を進めていた。どうやら親戚のお兄さんと来ていたけど、はぐれてしまったらしい。  積極的なリーダー格の友達は、返事を待たずにその子の腕をつかんでテントに向かおうとする。が、なぜかその子はテントに行くことを拒んだ。 「だ、大丈夫。ニコ、屋台を全部回るって言ってたから。ここで待っていれば、見つかると思う」  その子は伏し目がちに言う。大人に迷惑をかけたくないとか、恥ずかしいとか、子供ながらに色々思うことはある。真意はきっと違っていただろうが、当時の俺たちが知るよしもない。俺たちは、どうしようかと顔を見合わせていたのだが、ここでもリーダー格の友達の積極性が発揮された。 「だったらさ、俺たちと一緒に屋台めぐりしよーぜ。俺たちも全部回る予定だから、どっかで会えるかもしれない」  場所を離れて歩き回るなんて、一番やってはいけないことだ。けど、間違った正義感と早く遊びたい気持ちが働いた俺たちは、なんの迷いもなく間違った手段を選択していた。そして、その子も不安ながら遊びたい気持ちがあったのだろう。テントに行くことは拒んだのに、俺たちと行くことは「うん」と、返してきたのだった。  そうと決まれば、行動は早い。俺たちは『ユウ』と名乗ったその子を連れて、屋台めぐりを再開させた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加