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神社の舞殿では、古くから伝わる演舞が夜遅くまで舞われている。それもあって、境内に入ってくる人の流れは切れることがない。俺たちは、そんな人たちの流れに逆らって歩いていた。
「あっ! 流れ星だっ!」
どこからか聞こえてきた声に、反射的に足が止まり、空を見上げる。
「わぁっ、ホントだ!」
満点の星空にのびる一筋のオレンジ色の光。すぅっと、頭上を通りすぎ、向かいの山の方へと消えていった。
こんなにはっきりと流れ星を見たのは初めてで、ちょっとだけ驚き、感動もした。俺は、流れ星が消えてしまった夜空を、名残おしそうに見上げたままだった。が、驚きはまだ終わりじゃなかった。
「あっ、また流れた!」
「えっ⁉ もう一つきた」
一筋の光だった流れ星は、俺たちが見ている前で、どんどん数を増やしていった。気がつけば、夜空を埋め尽くさんばかりの数になっていた。
この奇跡的な光景に、周囲の大人たちはざわざわとしていた。けど、子供だった俺たちは純粋に感動し、目を輝かせこの光景を見つめていた。
「……ボク。将来、こんな風に星を降らせるんだ」
俺の隣にいたユウくんが、黒い瞳をこれでもかと言わんばかりに見開き、流れる星の輝きを映しながら言う。ユウくんの言葉の真意を知らなかった当時の俺は、星を降らせるなんて不思議なことを言うな、程度しか思わず、
「すごい夢だね! がんばって叶えてね」
と、流れ星の感動ままに応援したのだった。
消えない流星群をしばらく眺め続け、最後の一筋が消えるのを見届けたとき、
「ユウ!」
慌ただしくなった人の流れの中から、ユウくんを呼ぶ声が聞こえた。
「ニコッ!」
その声を聞いたユウくんが、走り出す。そこにいたのは、夜なのにサングラスをかけた若いお兄さんがいた。
「お兄さん見つかって、よかったね」
「うん。ありがとう、みんな」
お兄さんと再会でき心から嬉しそうに笑うユウくんと別れ、俺たちも今夜の出来事の余韻に浸りながら家路に向かった。
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