花火

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花火

パチパチパチパチ  白や緑、橙色の光線が夏の夜を彩っていた。暗闇に咲いては消え、咲いては消え、一瞬しか開かない花のように儚い。。。 「きれいだな」 「きれいだね」 二人、縁側に座り花火を見ていた。菅野が隣に目を向けると楽しそうな生来の横顔が色とりどりの火花を見ていた。 「俺、子どもの頃以来の花火だわ。菅野先生は?」 「俺は、まだ、小学生の姪と甥が岩手に居るから、夏休みになると一緒にやってたよ。後は、、、」 菅野の顔が一瞬、陰りを指し 「岩手で教師をやっていた時、クラスにお前みたいな不登校の男子生徒がいて、そいつとも花火したな。」 シュッ 花火が煙と光の余韻を残し消えた。 生来は自分と同じような生徒が菅野の過去に居たことに軽く嫉妬した。 「そいつは?今は?」 生来が、少し心配そうな声色で伺った。花火は全部、終わってしまった。庭は夜の静寂を取り戻していた。 「津波で流されたよ。まだ、見つかってないんだ。」 遠くで波が立つのが分かる。 「震災の日の朝、あいつ、学校に来てなかったからさ、何度も電話したんだけど、そのうち、授業も始まったりで、電話をかけることが難しくなってさ、そしたら、後で、あいつの父親から聞いたには、前の晩に高熱が出たんで、一人家で寝てたって。」 生来は、過去を絞りだすように語る菅野から目を離せずにいた。「手を握って、抱きしめれたらどんなにいいのに。。。」と隣で座ることしかできない自分が府がいなかった。 「あいつ、電話の音、熱でうなされながらも、聞こえてたかな。。。異変に俺が気がついて、家に行ってやれば、助かった命だった。きっと。」 生来は、返す適当な言葉が浮かばなかった。 「先生、俺さ、産婦人科医になるって話したじゃん。あれね、先生と出会ったから持てた夢なんだ。俺、先生の経験した震災に関する資料や本を読んでさ、奪われた命があるなら、俺は、命を繋げる仕事をしようって。」 ここまで、話して、生来は思いきって、菅野の手を握りしめた。 「震災では多くの命が無惨にも亡くなったけど、多くの人が負けねぞ!って気持ちでどん底から立ち上がったんじゃないかな?復興ってそういうことだよね?」 素直な言葉がまっすぐに菅野にぶつかる。そんな生来が頼もしく、その手が優しく、菅野の過去を包みこもうとしているのを感じた。 「お前、強くなったな。。。」 「それも、菅野先生のおかげ。。。」 そういうと、生来は菅野にキスをした。一ヶ月ぶりの感触。舌が絡みあって、お互いの気持ちを確かめあった。会えなかったけど、ずっと欲してた。。。 「せいら。。。」 菅野が一旦、キスを止め、生来の頬を両手で押さえた。もう、このひたむきな想いを拒否することなんてできそうになかった。 「生来、好きだよ。」 菅野の深い黒色の目が、熱をおび、生来を離さなかった。その情熱が生来の下部を固くした。菅野からの、初めてのキス。キスしながら、大きな男の手に髪を撫でられ、生来は身体がとろけそうになっていた。「熱い。触ってほしい。」生来は火照った顔で菅野に懇願の眼差しを送った。 しかし、菅野は生来の固くなったあの部分を触ってくれることはなく、抱きしめては、唇を重ね、舌を吸い、手で生来の身体を愛撫していた。首から背中、腰、髪、生来の全てを確認するかのごとく、手は生来の身体を往き来した。 「先生、俺、どうにかなりそう。。。我慢の限界。抱いて。」 生来の目は艶をおび、菅野に懇願した。しばらく、菅野はそんな、生来を愛しそうに見つめた後 「今日は、しないよ。もう、帰る時間だよ。きっと、ご両親心配してるはず。」 そういうと、ひょいっと軽々、生来を持ち上げて、庭を通り抜け、玄関前に生来を下ろした。 「どうすんだよ。こんなして。。。」 生来の身体は反応しすぎて、どうしょうもなかった。菅野は生来の腕をぐっと引っ張り、庭の死角で、最後、おやすみのくちづけをした。 「よく、寝るんだぞ。大好きだよ。生来。」 そういうと、生来の背中を優しく押して、家路に向かわせたのだった。 火薬の香りが夜の住宅街を漂っていた。。。
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