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シオン
愛おしい貴方の腕を引いているのは清楚に着飾られた女の子。
守ってあげたくなるようなくりくりとした丸い瞳。
思わず口付けたくなるようなぷっくりとした唇。
小さくそして柔らかそうな身体。
赤く染められた頬はマシュマロのよう。
仲睦まじく歩く2人は夫婦のようだった。
その人の隣は私の場所だと、貴女がいるべきではないと、そう言えたらどんなに良かっただろう。
貴方の隣にいるのが女性。
その事実は悲しさと同時に自然に感じ、目をそらすしかなかった。
大切な貴方の隣にいるべきは女性。
それは自然でひどく当たり前の事実。
男である僕が貴方の隣にいるのは不自然で"普通"から外れた恥ずべきこと。
だって僕は柔らかい身体も女性らしい丸みもない。
いくら世間での理解が増えたといってもまだまだ認められていない。
今やっと女性のオメガが社会で受け入れられて差別が無くなったというのに、男性のオメガが認められているわけがない。
それを1番分かっているのは僕なのに何を舞い上がっていたのだろう。
もしかしたら最初から、あの日僕が告白した日から貴方を縛り付けてしまったのかもしれない。
おかしいと感じていた。
2年経ってもなんのあともついてないうなじ。
2年経っても共にしてくれない1夜。
2年経っても結ばれることのない結婚。
おかしいと感じていたはずなのに、貴方と離れるのが嫌で見て見ぬふりをした。
僕はいつかこうなると予感していた。
だって貴方の瞳に僕が映ることは1度たりともなかったのだから。
あぁ、貴方はなんて優しくて残酷な人。
そんな貴方を愛しています。
ありがとう、さようなら。
シオン
追憶
君を忘れない
遠方にある人を想う
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