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宙を星が駆けていった。
「あー、また星がいったべなあ」
ほぼ全ての音に濁点がついている口調でオーおじさんが呟いた。
「ほら、おじさん、早く手動かしてよ」
「そげに急いでも、変わらんてえ」
宇宙にある惑星のひとつで、ゴミを拾う。これが僕たち「拾い屋」の仕事だ。
巨大な掃除機のような道具を片手に、宇宙服を着て、僕らは無線で話し合う。
「今日中にこのゴミを送らないと、エネルギー足りなくなるよ!」
「年寄りは労ってくんねえとお」
惑星に降り立つ宇宙船のエネルギーは、その星々で拾うゴミが元になっている。仕事のノルマとしてのゴミ、そして僕たちの宇宙船のためのゴミ。合わせた量を拾わないといけない。
「そんなこと言って。歳なんてくってないでしょ。喋り方でだまされないからね」
僕が宇宙船から出てきたときには、この星にはオーおじさんしかいなかった。仕事のやり方をおしえてくれたのも、オーおじさんだ。
「そろそろ、この星のゴミも少なくなってきたね」
「そだなあ。違う星を探さねえとなあ」
まるで他人事のようにオーおじさんが宙を見上げる。
また一つ、小さな星が宙を流れていった。
「あの流れ星がゴミになるんでしょう?」
なんとか今日の分のゴミを確保して、宇宙船に戻る。
宇宙服と掃除機とゴミを片付けて、僕は寝床の準備をしながら、前にオーおじさんが言っていたことを思い返していた。
「それなら、次は星が落ちてきやすいところのがいいのかな?」
「それはおまえ、死にに行くようなもんだあ」
流れ星が落ちてくる衝撃は、ちょっとやそっとのものではないらしい。でも、星々を渡り歩くのも大変だ。近くの惑星だって、2万光年は離れている。ちょっと見てくるだけでも1日はかかるとなると、ゴミを拾う人がいなくなってしまう。
「いいさあ。オレがいぐから、おめえさんはゴミ拾いしてなあ」
それって、自分が楽したいからなんじゃないの? と聞くと、オーおじさんは、バレたかあ、と愉快そうに笑った。
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