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ぷつぷつとお好み焼きが焼ける。
「そんなに確認してもすぐには焦げないって」
「私がガンで死んでもいいっていうの?」
「じゃあ火力を弱めればいいだろ」
「それじゃロマンがないわ」
ホットプレートを挟んで、僕と恋人の持田さんは夕食を共に過ごしていた。今週は僕の家の番だ。
持田さんの部屋のように整頓されているわけではないので、お好み焼きの煙も気にならない。どちらの家かによって食べるものが決まる。今週はお好み焼きだった。
「それに貴重なあなたとの時間だもの。一秒たりとも無駄にはできないわ」
長い黒髪を耳にかけてにやっと微笑んだ。
持田さんはとても忙しい。学業にサークルに先輩、同輩、後輩の付き合い、それに最近は地域の活動も行っていた。僕と会うのは一週間に一度、この夕食の時間だけだった。
付き合い始めてまだ八ヶ月。僕と持田さんの関係は順風満帆だ。
「それもそうだね」
僕は火力の操作ダイアルを回し、最大に設定した。ぷつぷつがジュクジュクに変わり、蒸発していそうな音に変わる。
「私の心配はしてくれないのね。信じられない」
コップを手に取り、下に片手を添えて飲んでいた。僕お手製の麦茶が持田さんの喉を通って身体の一部となる。
持田さんは箸でお好み焼きを確認する。上面はまだ液状で固まっていない。
料理担当は持田さんなのだが、これまた生地が薄い。箸で何度も焦げ具合を確認しており、すでに破れかかっている。
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