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僕は操作ダイアルを回し、火力を弱めた。
「火力はこのダイアルでコントロールできるよ」
「…………っ!」
かーっと耳まで真っ赤になっていた。両手で顔を隠しながら「もう死にたい……」と呟いていた。
「あ、焦げ食べる?」
指の隙間から覗かれる。ごもった声も可愛かった。
「ガンになったらどうするの?」
「ガーン」
時が止まる。お好み焼きが焼ける。僕がすべる。
「ぷっ」
持田さんはははははははははははと壊れたようにお腹を抱えて笑い出した。
「今日はロマッティックな夜ね」
「そうだね」
持田さんが笑のは珍しい。現実離れしてて、あの笑顔が甘美的というなら、確かにロマンティックだ。
「あなたは私がお好み?」
「焼いてほしいの?」
「お好みは?」
(了)
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