星空

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星空

「ねえ、あれが小熊座よ」 彼女はそう言って、曇りない空を指差し星をつなぐ。 何回もこうして一緒に夜空を見上げてきたが 僕には何がなんだかわからない。 ただの点の集合体が、まちまちに輝いているようにしか見えないのだ。 「えーっと、あれ?」 僕はそういって指で強い光を放つ星を結ぶ。 ふふっと彼女は笑う。 「多分違うけれど、それでいいと思うわ」 彼女はいつも説明はするものの、覚えろと強制はしない。 だから僕も覚えない。 そんな関係だった。 ヒューーー 秋の風が、小高い丘とそこにいる僕たちをまとめて吹き付ける。 昼間は暑さを残す今の季節も、標高の高いここで、しかも夜となると 少し寒さを感じさせる。 彼女は大丈夫だろうかとちらりと横を見る。 ピタリと目線が合う。彼女はきっと、星を見ていると思ったのに。 照れ臭くなって、ささっと上着を脱いで彼女に渡す。 「寒かったらこれを使って」 彼女はまた少し笑いながら受け取り「ありがとう。でもあなたは大丈夫?」と聞いてきた。 「平気だよ」決して、カッコつけたかったわけではない。 「そっか、寒くなったらいつでも言ってね」そう言って彼女は僕の上着に袖を通しはじめる。 その様を、最後まで見るのは気が引けてまた夜空を見上げる。 キラッ 視界を星が真一文字に横切る。 「あっ」僕は思わず声を出す。「流れ星」 「えっ、どこどこ?」彼女を見ると、空をキョロキョロと見渡している。 すぐ消えてしまったので彼女は見えなかったようだ。 「正面だったんだけど」 「あー残念、今度こそ!」 その朗らかな様子に今度は僕が堪えきれず笑ってしまう。 「どうしてそんなに見たいのさ」 「んっと」彼女は少し考えこんだ。「———内緒」蠱惑的な笑みとともに彼女は答える。 僕は、先ほどの流れ星に もう一度流れてくれと今更に願っていた。
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