神社の娘

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「それさぁ、アッキーの勘違いっていうか、後から作り直しちゃった記憶じゃないの?」 「なぬ・・?」 あたしたちは高3で、これからのことを真面目に考える時でもあって、いつしか進路の話になった。 大学を出た後に、神主の学校へ進んで、卒業後は他の大手神社で修業を経たのちに家を継ぐ。そして、この神社をでっかくしてやる! これがあたしが描いている未来像だ。 この時に、ちょっと自虐的にね、 『結婚はしない、子供も欲しいと思わない、あたしにはそういうの無理、たぶん、そういう血が流れてる』 って言ってしまった。 真にだと、ついつい余計なことまで、言ってしまう。これまで誰にも言ってこなかったことまで。 母からの別れの言葉。 「お父さんより、亜紀ちゃんより、好きな人ができちゃったの」 呪いの言葉だ。 「アッキーが自分でさ、わかりやすく、納得しやすいように、作り変えちゃった記憶だと思うけどな、それ」 「はぁ?」  カチンときた。 「何、言ってんの? てめーあの場にいないだろ。あ・た・し、だけに言ったんだよ!」 「アッキーの親父さんは、その場にいたろ? 確認してみ」 「しません。うちでは母の話は一切しないの!」  そうか、確かに、父親もいたはず。なのに、あんな言葉を使うだろうか? 刺されちゃっても仕方ないよーな、逆上させるよーなことをあえて、あの場で言ったりするかな。あれ? あたし聞き間違えてた? 「お母さん、ずっと、お前のこと心配してるんだから、そんなこと言わねーよ」 「え・・?」 あたしは跳ね起きて、隣で寝っ転がってる真の襟首を掴んだ。 「あんた、会ったことあるの!?」 真はあたしの剣幕に慌てて、大動物をなだめるかのように、冷や汗をたらしながらドードードーと、抑えて抑えてと引きつった笑顔を作った。 そして言いにくそうに、歯切れの悪い言葉をつなぐ。 「俺は父親とも毎年、会ってるからさ。離婚したって、俺にとっては、父親じゃん。それは変わらないんだし。うちの母ちゃんは、その、お前んちと違って、それが普通だって言うし。ただ、お前のところは、ちょっと家が違うじゃん。神社で、そういうのも難しかったのかもしれないけど・・・」 「そうか・・・。会っていいんだ」 あたし、ダメなんだと思ってた。 そうだ、離婚しても子供に会うのは普通のことか。 でも、何かうちの場合は、こう地域を巻き込んでの事件っぽくて。何かそういうのが許されないんだと思ってた。 母からの便りも一度もないし。父親も、一切、母のことは口に出さないし。 ん? ヤバい、全てがあたしの脳みその中で、いいように作り替えられてる? 周りに、大人たちに、そんな風に信じ込まされてきたのかな? あれ?  何が正しい?  あれ? この10年、あたしちょっと辛かったんだけど。 あれ? 神様、ちょっと助けなさいよ。
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