神社の娘

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お母さんは、あたしが想像していた以上に、若く見えた。 素敵な人だ。 朗らかで、瞳がちょっと垂れ気味だから、いっそう優しくみえるのかも。 ずっと笑顔を向けてくれて、幸せそうな感じに見えた。 滞在した三日間、何度も何度も「お母さん」「お母さん」って呼びまくって、そして、数えきれないくらい「亜紀ちゃん」「亜紀ちゃん」って、呼んでもらえた。 ついでに言うと、「大きくなったね」「美人さんになったね」「ほしいものない?」って言葉が何度も何度も、お母さんの口からもれた。 博多を散策したり、太宰府天満宮にお参りしたり、ショッピングモールで買い物したり、三日間はあっという間に過ぎてしまった。 lineの交換をして、可能ならばGWも、夏休みには絶対また来るって約束もした。 あたしを縛り続けてた「呪いの言葉」、これに関しては聞かずじまい。 と言うか、そんなの、もうどうでもよかった。 真の言う通り、たぶん、あたし自身が作り上げて、悲劇のヒロインになりきっていたんじゃないかな。 そんな気がする。 博多駅近くの高速バスターミナルの待合室。 午後2時に出発予定のため、あたしとお母さんは、食事を終えてから、ここでまたずっとしゃべり続けてた。 「そお、亜紀ちゃんは神主、目指すのか」 お母さんは、「家」からのプレッシャーで、あたしが神主を目指すものと最初は考えたようだから、コレに関しては100%違うのだと否定した。 「うちの神社、もっとでっかくしてやる!」 だって、これってあたしに与えられた、すっごい武器だからね。使わないわけにはいかんでしょ。 そりゃあ、いろいろなしがらみがあるのは、子供の頃からチラチラ見聞きしてますから、大変なのはわかってる。 だけど、この仕事って、ちょっと面白そうじゃない? 「ねぇ、お母さんは、神様って信じてる?」 元神主の妻、そして、これから神主を目指そうという娘の母親にする質問ではなかったか。 お母さんは微笑みながら左手で、あたしの右手をギュッと握った。 「そうね、お母さん、亜紀ちゃんにこうやって、いつか会える日がきますようにって、ずっとお願いしてきたからね。それが実現したんだからさ、神様、信じないわけにはいかないなぁ」 「そっかぁ、やるなぁ神様」 待合室のドアが開いた。 背にはリュックを背負って、両手にはお土産の袋をいっぱい抱えた真が入ってくる。 「こっちー」 あたしは左手を上げて、呼び寄せた。 もう、発車時間までわずかしかないや。                       END
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