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夜の巡回というのは、やはり気が張るものだ。
日のあるうちはほっこりとした空気のある商店街や住宅街も、どことなく油断できないような感じになる。特に店と店の間の狭い路地なんかは、いかにも何かが潜んで良そうだ。
「夜になってもあっち―な」
空を見上げる先輩の言葉に僕は頷いた。
今夜は風が無いせいだろう。
僕も先輩と同じように夜空を見上げる。
まるで降ってきそうな程の、満点の星空だった。
「あー、今年は無事デートできるんだろうな」
「何がです?」
「織姫と彦星」
そう言えば今日は七夕だった。
道理で短冊も書かされたわけだ。
「良いよなぁ。デート」
「え、でも年一ぐらいでしか会えませんよ?」
「そういう現実的な話すんな」
「いてっ」
拳骨が飛んできた。
「何事もなく終わらせて、冷たいもんでも飲みてーな」
「良いですねぇ」
何とか空気を呑気にしようと先輩と僕がそんな話をしながら歩いていたその時だ。
突然響いた悲鳴でそれは台無しになった。
「行くぞ!!」
「はいっ!!」
こういう時はさすがで、先輩が先に走り出す。
僕は慌てて後を追った。
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