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ただどうして、そう思いながらも僕がそれを言葉にしていたかと言えば、せめて誰かに、そうだね、と言ってほしかったからだ。
肯定してくれる人を探していたと言ってもいい。
無理なのだとしても一緒に星を探してくれるような、いや、行動を望むなんておこがましいことは言わないから、そう思う僕の心の隣にいてくれるような、そんな言葉を渡してくれる人を見つけたかった。
そのたった一人を見つけたあの時まで、僕はずっとその思いにかられていた。
「――やっぱりここにいた」
草を踏む音がして振り返ると、夏希さんが苦笑していた。
「すみません」
頭を下げると「ううん」と夏希さんがかぶりを振った。
夜に外に出ることはままあるが、少し長かったり時間が遅かったりすると、夏希さんは心配して僕を見にきてくれる。ほとんど真っ暗な夜に出歩くことがどれだけ危ないか、僕もよく分かっているから、家から見える距離以上は行かないようにしているのだけど、それでも、だ。
いい人すぎて、たまに心配になるくらい。ちなみにそれは旦那さんである慎さんも思っていて、夏希さんの知らないところで、たまに慎さんとそういう話をする。
夏希さんは、奈月さん――僕を生んでから亡くなってしまったという女性だ――から預かった大切なお子さんだから、なんて笑っていうけれど、だとしてここまでできる人というのはそういないと思う。
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