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邪魔なんて。むしろちょうど、考えていた時に現れた偶然が嬉しい。僕は首を振った。
夜中に出かけている、とよくうわさされているけれど、僕がこの時間に功くんに出会ったことはない。
「散歩?」
功くんは小さく笑った。息が混ざった音は、馬鹿じゃないかと言いたいのだと思う。
「それ言わない方がいいぞ。お前も同類にされる」
「そう?」
「深夜徘徊だと」
功くんはまた、小さく笑った。それが自嘲なのか、はたまたそう言う大人たちをあざけっているのか、僕にはどちらか分からない。たぶん功くん自身にも分からないのだ。
功くんは一部の大人たちから嫌われている。
理由は単純で、復興に協力的ではないから。
「深夜なんて時間じゃないのに」
「そういう問題じゃないだろ」
やるべきことはやるけど、それ以上のことはやらない。二年ほど前から特に、昼間に寝ていたり、代わりのように夜中に出かけていたり、休憩中にふいにいなくなったり。
功くんに聞いたら、去年は図書館に行っていたという。今は探し物をしているらしい。それを言わないから誤解されるのだとも思うけれど、でも僕からしたら、やれているだけで十分だ。
功くんがだめだと言うのなら、僕なんて一体何なのだろう。復興を手伝えないどころか、そもそも誰かの手を借りないと生きていけない。生き物としてあまりに脆弱だ。
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