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「功くん」
「ん?」
「今日は星、見えないかな」
隣で功くんが動く音がする。たぶん後ろに手をついたのだと思う。
「だな。雲ってる」
「そっか」
でも功くんは違う。
こうして一緒に空を見上げてくれる。目が見えない僕と一緒に、同じように空を見てくれる。
星を見たい、と言った僕と、星を見ようとしてくれる。
「また今度だな」
「――うん」
顔、手、足。タオル、服、カーテン。水、草、石。月はこんな感じ。太陽はこんな感じ。地球がこれくらいだとしたら、これくらいの大きさ。
音で聞いて手で触れて、僕はそうやって物を見てきた。
けれども星は小さくて、たくさんあって、それでいて集まってもそれほどには明るくないものだから、ぼんやりとした光を感じることもできない。形も曖昧で、丸いのだとか真ん丸ではないのだとか、絵を書いてもらってなぞったら何だかとげとげしていたり、今のところよく分からない。
だから、今度、がいつくるのか。予想すらできないけれど、それでも今の僕はもう、それほどがっかりしてはいないのだ。
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