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Y県の山奥に、ほしみ村と呼ばれる村がある。
父方の母、つまり私の祖母が住んでいるその村は、大体90年から120年程度に一度、“ほし”が降り注ぐのだという。
そしてその“ほし”を口にしたものは不老不死になることができる。
そんな言い伝えが現代に伝わっている。
――正しく表現するならば、祖母がその言い伝えを後の世に残す語り部なのだ。
しかし、父も母も、祖母がその言い伝えを口にすることをとても嫌っていた。
理由は簡単だ。
『そんな話はただの馬鹿馬鹿しい作り話だ』
二人ともそう言って、祖母の村に行く事すら嫌ったのだ。
二人が祖母から離れるのと反比例するかのように、私は祖母のことが気になって気になって仕方が無かった。
会った事のない祖母にどうしても一目会いたくなり。
両親の目を盗んで、バスの時刻表と睨めっこしながら村に行った小学生の頃の私。
そんな私を、すぐに孫だと気付いてくれて家に招いてくれたのが祖母だった。
怒った両親に連れ戻されることになった次の日まで、私は祖母とたっぷり話をし、触れ合うことが出来たのだ。
……どうして次の日かと言うと、ほしみ村への公共交通機関はバスしかなかったということと、両親が私の足取りを掴むまでに時間が掛かったからである。
今となっては、楽しかった思い出と苦い思い出の半々といった記憶である。
それでもその時に、私ははじめて祖母からほしみ村の言い伝え――“ほし”に纏わる話――を聴いたのだ。
どうしてそれを今思い出しているかと言うと。
――――今年が、“ほし”の降る年なのだと祖母からの便りがあったからだ。
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