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✣ ✣ ✣
「桜子様は学校へ行かれたのですか?」
「うん。僕のことを見送ってから登校するって言ってたんだけど、今日は遅出だからって説明して納得してもらった」
「一限目をお休みするとはおっしゃらなかったのですか?」
「……言ってた」
「ほっほっ。本当に愛らしいお方ですね」
「笑い事じゃないよ、山田さん。僕のためにって頑張ってくれるのは嬉しいけど、もっと高校生らしく、受験生らしく、過ごしてほしいんだよね」
「桜子様は、進学を希望されていないのでは?」
「それは本心じゃないよ」
「本当は進学を希望されている、と?」
「賢いし、好奇心も旺盛だからね。きっと充実したキャンパスライフが待ってる」
「稜樹様は、桜子様がお勉強されたい分野をご存知なのですか?」
「当然。あの子のこと何年見てきたと思ってるの?」
「ほっほっ。そうでした」
「このこと、桜子には黙っててね」
「もちろんでございます。稜樹様が幼い桜子様への恋心を紛らわすために数多の女性とお付き合いするも、どれも見事に長続きしなかったということも黙っておきます」
「……ほんといい性格してるよね、山田さん」
「ほっほっ」
「今日は早く帰れそうだから、桜子と外で食べてくるよ。そこで、桜子の考えをちゃんと話してもらう」
「……山田は、お二人の幸せを心の底から願っておりますよ」
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