遅刻癖

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遅刻癖

我が輩は遅刻常習犯なり。犯罪経験は星の数。叱られたことも星の数。だけど直らぬ、それが人の性故に。 なんちて。 俺のあだ名は遅刻常習犯。その名の通り、物心ついた頃から遅刻癖が直らない常習犯。と言っても、本当に大事な時にはちゃんと時間を守るんだぜ? 信頼してる人との約束は遅れるけど。だって、なんだかんだ言っても最後はみんな許してくれるからな。 長い付き合いになるとさ。みんな俺の遅刻癖をわかってんだよな。「こいつ、いつも遅刻する」って。わかってるから時間を早めに設定してくるんだ。だから俺が到着するのは、いつだって設定した奴の本当の希望時間ってわけ。はぁ、俺の扱い方わかってるよなぁ…ほんと。 つまり。俺に対して「遅い!」って怒る奴はまだ付き合いが浅いってこと。更に言うと、俺に待ち合わせ時間を設定させる時点で親しい以前の間柄ってことさ。「何時がいい?」「え、行けた時」そういう会話になるぜ? 俺。 小学生の頃からの同級生なんて絶対俺に時間を指定なんてさせない。絶対な。 宿題や課題だって、期日に間に合ったことの方が奇跡だ。今までで間に合ったのは…5回くらい? はははっ! 昔からずっとこうなんだよ、俺。いくら言われてもほんと直んない。直せないんだ。俺の意思で直せるもんじゃなかったんだ。 だから、俺の友人たちは工夫して協力して努力して尽力してくれる。 いつだったか、こう思ったことがあったな。 俺だけ、時間に対してゆるいな。 時間に対しての考え方がゆるい。時間の捉え方がゆるい。時間の感じ方がゆるい。俺だけ、どこか他の奴らと時間がずれてる気がしたんだ。 大事な事ほど時間がずれちまう。 大事だと意識すればするほど俺は遅れちまうんだ。 繋がりが浅い奴との約束は、ぶっちゃけそんな大事じゃないんだ。だから遅刻すると言っても数分。 初めての彼女の誕生日、俺にとってすごくすごく大事で、でも恥ずかしくて誰にも相談できなかった。どうなったと思う? プレゼントを渡したのは1か月後。彼女は許してくれたけど、俺は泣きながら別れたよ。 大事な大事な恩師の葬式。当然間に合わなかったよ。俺だけさ。死に顔にも会えなくて、遅れて行った時にはその人は骨になって土の中。 おかしいだろ? 笑えよ。怒ってくれよ。どうしようもないんだ。直らないんだよ。 俺だけ、時間とずれてるんだ。
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