置かれた手紙

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置かれた手紙

は? どういうことだ? 俺はそこへ走った。友人が立っていたその場所へ。 着いた所には誰もいなかった。ただ、道路脇の柵の所に手紙が挟んであった。ビニールやら、紐やら、重石やらで、頑丈に頑丈に補強されてその手紙はそこにあった。ずっと前からあっただろうそれは、誰かを待っていた。 俺はそれを手にとった。 嫌な予感がした。 手紙の裏には友人の名前が書かれていた。 宛名は俺だった。友人から俺への手紙だった。 どういうことだよ。どういうことなんだよ。 焦りながら俺はそれを開いた。開いて一番始めに書かれていた文は 「どうせお前は遅刻したんだろ」 遅刻してねぇよ。ちゃんと、間に合ったよ。 でも。 読んで読んで、一番下に書かれた日付に俺は膝をついた。 日付は 1年前だった。 俺は「遅刻常習犯」。 今回も遅れちまったようだ。 大事な友人との最期の待ち合わせだったのに。 あと5分。あと5分。 あと5分早くそこに行けたら、何か変わっていたのか? あと5分遅くいつも通り遅刻していたら、いつも通り会えたのか? そんなことなかったんだ。 そんなこと、はじめからできるはずなかったんだ。
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