死神

2/5
前へ
/163ページ
次へ
******** いつからだろう。 自分が呪われているんじゃないか、と思い始めたのは。 俺が生まれた日は、ジャーナリストの父の消息が途絶えた日だった。 若くして俺を産んだ母の代わりに俺を育ててくれた祖父母は、俺が小学生の時に癌を患い、中学へ上がる頃には二人ともこの世にはいなかった。 俺を育ててくれた、大好きな祖父母がいなくなった。 しばらくして紛争地域で消息を断っていた父の生存が確認され帰国したけれど、母の腹に子を宿し凝りもせずまた国外へ。 祖父母の遺産は僅かで父の収入もアテにはできず、弟を産んだ母はすぐにまた働かなければならなくて、俺は弟の世話に明け暮れ、なんとか高校に進学するも遊ぶことはおろか部活さえも入れなくて。 戦地に行っていた父が帰国したのは俺の18回目の誕生日だった。父は生きている人間の形をしていなかった。 父との思い出は無いに等しい。 それでも俺はジャーナリストの彼が誇らしかったし好きだった。 父の実家はよく知らない。葬儀に父方の祖父母が顔を出すこともなかった。ただ、どこだかの界隈での有力者だということしか知らない。 父の死により入った保険金がかなりの額で、母は仕事を辞め、俺は弟の世話役を解任され家を出た。 勉強なんて二の次だった俺は大学には行かずフリーター生活。 そんな中でも初めて他人を好きになって、初めての恋人ができた。矢先、不幸にも彼女は交通事故でこの世を去った。 俺は、人を好きになってはいけない人間なんだと思った。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加