死神

3/5
前へ
/163ページ
次へ
家を出て6年目。知り合いの伝手で就職先が決まった俺は、母と弟を食事に誘った。 幸い、俺は母と弟の事はあまり好きじゃない。 母は元々、俺にあまり関心が無かったように思う。16で産んだ子に対しての母性は芽生えにくかったのかもしれない。 一方で、オムツを替えてミルクをやって離乳食まで作って食べさせてやって、仕事で迎えに行けない母の代わりに園長には大目に見てもらって保育所の迎えに行ったりもしていた弟に愛情が無いわけじゃない。ただ怖いんだ。俺が大事に想う人は、必ずいなくなってしまうから。 だから今日が二人に会う最後にしよう。 そう思っていた。 「のえる、ちゃんと食べてるの? また痩せたんじゃない?」 「バイトが不規則だったしちゃんとした時間にメシ食ってなかったからかな。でも来月からはまともな時間に食えそうだし大丈夫」 「のえる~、この肉めっちゃ美味い!」 「コラ立夏(りっか)! 『お兄ちゃん』でしょ!」 「お母さんだけずるい! 僕だってのえるって呼びたい」 「立夏は『兄ちゃん』って呼べよ」 本当は母にも名前を呼んでほしくない。 若気の至りとはいえ母のネーミングセンスは壊滅的だったと思う。 クリスマスに産まれたからって『のえる』は無い。しかも平仮名。子供の頃はまだ良かった、可愛いで済まされた。 24になった現在、正直かなりキツイもんがある。いや、だいぶ前から思ってはいたけど。 弟は『立夏』と名付けられた。「夏生まれだから『みんと』にする~、カワイイし」と言った母をなんとか俺が説得して『立夏』になった。それでも女みたいな名前で少し可哀想だと思わないこともないけど、俺よりはマシだと思う。 弟は9歳。大きく歳も離れているし、3歳頃までは俺が育てたみたいなもんだし今でも可愛いとは思う。 でも・・・
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加