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「星倉 杏里さん、立夏さんの御家族の方ですか?」
「・・・はい」
声を掛けて来た白衣の男達を視界の端で捉えて無気力に返事をする。
独りになることさえもできないのか・・・
「私達はこの大学病院で政府から命じられた研究を行っているものです」
手渡された名刺には『細胞再生デュアルプロジェクトチーム 責任者』と書かれている。
「細胞、再生・・・?」
「失礼。極秘裏に進めている研究ですのであまり詳しい名称をお伝えできないんです」
「・・・・・・・・・」
「理不尽な事件や事故で御家族を亡くされ、かつ条件を満たしている御遺族様にのみ、お話をさせて頂いています」
条件・・・?
「実際に見て頂く方が早いかな。ご案内します」
促されるままに白衣の男達について行くと、病院棟と大学棟から隔離されるように敷地内の隅に建つまだ新しい研究棟へと案内される。
「ここでは、人体の細胞を復元し複製を造る研究をしています。簡単に言えば、クローンです」
クローン? SF映画なんかに出てくる、あの?
映画で観たのと酷似した大きな筒状の水槽のようなものが並ぶ部屋の奥、手術台の上に寝かされているのは血だらけの裸体を晒された弟。
「立夏! 立夏っ!」
「落ち着いてください星倉さん。弟さんは既に死亡が確認されています」
「わかってんだよ、そんなこと! てめえら立夏に何するつもりだ!」
激昴した俺は男二人に押さえられ喚くことしか出来なくなる。
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