ピンポーンばとるっ!

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 店の中に入るとゴブリンみたいな店員さんが出てきて、「何名様ですか?」と訊ねてきた。  僕が「ひとりです」と答えると、二人掛けのボックス席へと案内された。  ここに来る度に毎回同じやり取りをしているので、まるで店に入るための合言葉みたいだ。なんて思う。  僕は席に案内される合間に、店内の様子を伺った。  店が混むご飯どきをずらしているので、客の数は少ない。  席に着くと、ゴブリンのような店員、(長いのでこれからはゴブさんと呼ぼう)が注文のやり方が変わったのを知っているかと訊ねてきた。  ここ数日、このレストランに通っている僕は既にそのことを承知している。ゴブさんにこの質問をされたのは三度目だ。  僕はメニューを開いて商品を選びつつ、改めて店内の様子を伺う。客はカップルがひと組と、女性グループがひと組。    店員は三人。僕を席に案内してくれたゴブさんと、ゴジラみたいな巨体と厳つい顔をしたおばさん店員。そして天使の如く可憐な彼女だ。  僕はその天使さんに会うために、あしげくこのレストランに通っていた。  注文する料理を注文用紙に書き込み、呼び出しスイッチを押す瞬間がやってきた。  このひと押しで、今日の僕の運命が決まる。  テーブルの端にある呼び出しベルを押せば、店員が注文を取りに来てくれるのだが、問題は誰が来るかだ。  ゴブさんか、ゴジラか、それとも天使さんか。確率は三分の一だ。  だがしかし。今日は客の数が少ない。しかも僕以外は食事を始めている。ということは、ゴジラは動かない可能性がある。  ここ数日、店員の動きを観察してわかったことだが、ゴジラの動きは鈍い。客が閑散としている時は、ほとんど動かない。  三人の中で一番の先輩なのか、それとも自重に耐えるのがやっとで動けないのか。どちらにせよ、僕には好都合だ。  他の客がベルを鳴らせば、ゴブさんか天使さんが動く。もし、ゴブさん動いたのを見計らって、ベルを鳴らせば、天使さんがこの席に降臨する。  だが、他の客はすでに食事を始めていて、ベルを押すような用事はなさげだ。  これは運命を天に任せてベルを押すしかない。  僕が意を決してベルを押そうとしたとき、「いらっしゃいませ」と鈴のような声が響いた。  新たに訪れた客の対応に天使さんが出たのだ。  危なかった。いまのタイミングでベルを押したら、この席に召喚されたのはゴブさんだった。  天使さんは新規の客を僕が座る席の斜め向かいに案内した。  チャンス到来!  天使さんが案内を終えるのを待ってベルを押せば、僕から遠いゴブさんより、すぐ近くに居る天使さんが反応してくれるはず。  僕は再びベルに手を伸ばそうとした。  しかし、天使さんが案内してきた客の姿を見て、その手は止まった。  その男には僕が思わず手を止めてしまう程のインパクトがあったのだ。    
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