ピンポーンばとるっ!

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 なんで、ちょんまげ?  その人は、短パンにTシャツ、そしてサンダルと、格好はすごくラフなのに、顔だけは暴れん坊将軍だった。  なっ、なんだ。この人は?  僕は思わず、そのちょんまげを凝視してしまった。  その視線に気付いたのか、ちょんまげは僕を見ると、ニカっと爽やかな笑顔を作って、ウィンクをした。  びっくりして、慌ててメニューで顔を隠したが、やっぱ気になってしまって、そっとメニューの端からちょんまげの様子を伺った。  ちょんまげはメニューをサラッと見ると、手早く注文用紙に記入して、ベルに手を伸ばした。  だが、直ぐには押さずに、こちらをチラリと見た。 そして、掌を上にして「お先にどうぞ」とやった。  僕は会釈をして、ベルを押そうとしたが。思い止まった。  もしかして、あのちょんまげも天使さんに注文を取りに来てもらうのを狙っているのでは?  天使さんは新規の客を案内するという仕事を今しがた終えた。  ここでベルを押したら、次に動くのはゴブさんではないだろうか。  さっき僕が入店した時に対応したのはゴブさんだった。でも、ちょんまげの時は天使さん。  もし、天使さんとゴブさんの間で作業ローテーションが組まれていたら?  僕はベルに伸ばしかけた手をひっこめて、ちょんまげに、「まだ決めてないので、そちらからどうぞ」とジェスチャーで返した。  ちょんまげはそれにウィンクで応えると、ベルを押した。  ピンポーン!  店内に呼び出しベルの音が響いた。  「は〜い」  それに反応したのは天使さんだった。  しまった。読みが外れた!  天使さんがちょんまげの元にやって来るのを見て、僕は内心、悔しがった。  素直にベルを押していれば、天使さんがやって来たのは僕の方だったのに。  注文を取り終えて去って行く天使さんを見ていたら、ちょんまげが僕を見て唇の両端を上げた。  ふん。甘いな。  僕にはちょんまげが、そう言っている様に思えた。  やっぱり、あのちょんまげは天使さんを狙っているんだ……。  僕は焦る気持ちを抑えて、ベルを押した。  ピンポ〜ン。  そのベルで召喚されたのは、ゴブさんだった。  あうっ! しまった。もう少し時間を置けばよかった。よく考えたら、ちょんまげから注文を取った天使さんが僕の元へ来る可能性は限りなく低くくなっていたのだ。  やはり僕はあのちょんまげの存在に動揺してしまっているようだ。      
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