ムテキ君の無敵な話

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 ***  動物には、人間にはない第六感が備わっていると言う人もいる。  それこそ、地震が来るのを人間よりずっと早く余地したり。大災害の直前に、みんなで大移動を開始したりというのもその第六感ゆえのものであると。勿論、人間には聞こえない程度の小さな音や臭いを感知して、異変を察知している可能性もあるが。  確かなことは、とにかく特別な能力でもなければ説明がつかないようなことをして、ムテキ君が私の命を救ってくれたという事実だけである。 ――こいつ、本当は凄い犬、なのかなあ。  まあ、問題があるとすれば。 「ちょっと待って、なんでそこでまた私のうしろ見るの!?」  おやつを食べながら、突然口と手を止めて私の後ろをじーっと見始めるパグ。  私が焦ったのを見て、ふうー、とため息をつく仕草は、どう見ても馬鹿にされているとしか思えない。なんと気まぐれで、自己中で、面倒くさい犬なのか! 「あんた実は私が慌てるの見て面白がってる?面白がってるよね、ねえ!?」  残念ながら。  わんちゅーる、で頭がいっぱいの犬には、そんな私の言葉は一切届きそうにない。
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