星のランプに手が届く。~君野二葉~

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 ただ、思いの外、冷静である。  目に映る情景に違和感を全くと言っていいほど覚えないのだ。  この街には許容範囲なのだろうか。彼らが周りを気にすることなくHOTEL B‐INNに入ったのを確認すると、すっと踵を返してTSUTAYAに戻って行った。  いったい何を見たかったのだろう。   一階にあるスタバ店員がカフェモカを作っている。マグカップに牛乳を注ぎながら、お客らしきスーツ姿の男性と談笑する。  彼女は黒髪を後ろで綺麗に束ねて空豆を剥いたような顔で笑う。  私はいつもの渋谷が見える席に腰掛けて、彼女のイッタ時の顔を思い浮かべてみたものの、案外、興奮しないのが不思議だった。  再び携帯を手にして今度は電源を落とした。久保あきらはキーボードに出だしの文書を打ち始める。  今しがた起きたことを回想しながら綴っていると、その違和感が文字を並べる画面越しに行き成り飛び込んできた。  瞼を閉じても、りんりんと輝く太陽が、そこにはっきりと分かる感じだった。  ……何かある。言いようのないものを渋谷の雑踏に見つけたのだ。
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